LastUpDate:04/12/11
古流射法 - 龍之口
平田 治
 
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はじめに

龍之口とは、簡単に言いますと古流射法(昭和の始めまで使われていた射法)で弓を引き納めた時、勝手の小指を勝手の肩口につける技法のことです。

現在においては古流射法を語る人、射法を紹介した書籍が少なくなって、単にこれを参考までに知りたいというだけでも、ほとんど目に触れることも出来なくなってしまっています。
また、昔の射法について聞いた事がある方も情報量としてはかなり乏しくなっているのが現状ではないだろうかと考えています。これでは誤った話が伝わってしまっても不思議ではありません。

私自身、一貫流の書籍に触れ、感化される事で色々調べ始める前まで、明治以前の弓術については、
「昔は兜を被って弓を引いたので強い弓を引いたと言っても頬(兜口)までしか引かなかった」

とか

「三十三間堂の通し矢には8,000本という記録があるが人間業じゃないから作り話かもしれない」


など

それ自体、本当かどうかさえ見当もつかない「うわさ」としてしか知ることがありませんでした。

ついでに弁明しておくならば前者(兜口の話)は弦道の都合上必要に迫られただけであって、烏帽子など兜をかぶらず弓を引いた方は強弓でもしっかり龍之口を取ったようですし、兜をかぶった人も平時の練習では龍之口で練習をしていたようです。後者(通し矢の話)は記録というものは、自分がどう思うから作り話にできるというものでもないので(8,000本という本数が信じられなくても)実話です。

ここでは龍之口の引き方の手引きを解説するにあたり、現在の射法と古流の射法を比較することで射法(和弓の引き方)の仕組みを見ていきたいと思います。


また、最初にお断りさせて頂く事として、

下記の河毛先生の文章にもある通り、

引取は各流とも大同小異なり。ただし三段に引くは好まず。勝手は肩につくを好む。是は一貫流にあらず。総て古昔の弓書皆付くるものと記してあり。竹林流は一貫流の遠祖にて肩に付くものとなす。右の通りにて肩に付くるは強弓も引きよく保ちよく心眼よしとす。故に肩に付くるは一貫流の発明にあらず。昔時の射法に則りたるものなり

龍之口という技法、もしくはそれを含む射法自体は一貫流特有のものではなく、日置 竹林流から受け継いだもの、もしくは求身抄(「安斎雑考」より伊勢貞丈(1718-1784) 室町時代の小笠原流出典で旧時一般的な弓書2022/09/25.修正)にも記述がある事から旧時、広く知られた技法だったと考えられます。

 
龍之口 という 言葉 について
 一貫流保存会では、古流射法の勝手の事を「龍之口」と呼んでおりますが、そもそもは弓を引く勝手の形を龍の頭に形容したものと推測することは容易く、これは現在の射法においても同様でありますから、古流射法の勝手だけを意味するものではないかもしれません。
 しかし、現在においてこの言葉はほぼ死語となっておりますので(春原平八郎著:「現代弓道小事典」にも掲載されていません)、ここでは古流射法、もしくは古流射法の勝手の呼称とさせて頂きます。
 
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